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yuuの一人芝居

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創作秘話 「17歳の 海の華」

 創作秘話 「十七歳の 海の華」2016/8/11

 この物語は実話に近い。
 私が、学校を休校していたったアルバイトで伊勢湾台風がもたらした神戸は塩屋の海岸堤防崩壊を修復するために訪れた時の話である。
 伯父貴が其の方面の仕事をしていたので帳簿でも付けてくれんかと言う事で一カ月を限りのバイトに出向いた。学校には学費を稼ぐと言う事で理解を貰っていた。
 夜行列車で降りたのが塩屋と言う瀬戸内海に面した別荘地であった、ようやく明けて行く塩屋の通りを二十名ほどの土方の人達と町を通り其の現場に到着した。
 私にとっては未知の世界でありこれから何が起こるのかと言う好奇心がふつふつと心に立ち上っていた。
 其の様を青春と言う時代にかぶせて、青年の世界観を書き著わすのが目的であった。多感な歳に色々な人とめぐり合う、それは異次元の世界として映った。其の時の風俗はここに書いている。
 見るもの触れるものが総て未知のものとして認識しなくてはならなかった。
 大人の社会に束の間入り込んで社会を覗いたという事だ。
 其の頃日本はまさに復興の最盛期であり、まだ景気は一握りの人たちの物で全国民の物ではなく享受すると言うところまでは行ってなかった。神戸の線路下の商店街では片方だけの靴が売られていた時期である。後年にそれは浅草の屋台でも見たことがある。まだまだ復興しつつあると言うところでの大きな台風で伊勢湾一帯は壊滅的な被害が出ていた。神戸の海岸もいたるところで堤防が崩れており瀬戸内海の波がそこに打ち寄せえぐっていた。
 其の海の事は今でも鮮明に覚えている。和歌山からだんだんと夜空がしらんで神戸の空を照らす明かりはこの世のものとは思われないほどきれいだった。海はないでいて明りをきらきらと跳ね返し、海を客船が警笛を鳴らしながらわたっていた。漁師たちの小舟が小さく黒点のように散らばり漁をしていた。
 冬の海は寒さを増すごとに波が大きくなり潮騒は限りなく押し寄せていた。
 私は見た、ここにきている土方の人達は農業の閑散期に出稼ぎ出来ていた人たちであった。全国を渡り歩いているとび職も沢山来ていた。大工、賄いの夫婦、総勢五十人が三棟の板を打ち付けた簡単な飯場で過ごしていた。
 酒と女の話がのべつまくなしに続いていた。
 神戸の街に時に出て、あるくことが出来るようになったのはここにきてから半月くらいしてからであった。
 対岸には淡路島がくっきりと姿を見せていた。
 時に心を休めるためには最適な場所で多くの別荘が海岸線に面して建てられていた。山になかにも洋風の別荘が立ちならんでいた。
 ここの話は実話と書いたが半分は創作したもので青春期に出会ったことの奇跡を書き著わしたものである。ここでの思い出は終生消えることがないだろう。それが青春と言う時代の思い出であるならば余計に鮮明にのこるものだ。
 青春、そこに美しい物語を書きたくてこのような物語が作られた。これは貴重な体験を裏打ちしながら思い悩む時期の心の起伏をかいたものなのである。
 たぶんに美化して書いた。
 海が荒れ杭打ちのクレーンが流されそれをつなぎとめようと懸命に戦う姿が生きると言う事なのだと教えられた。また、無くなった仲間を探しまわる人情、舟に一杯花を積んで海にささげる、そんな美しい物語を書いた。それは私が心の中でそうしたいと願ったことだった。
 このひと月学校の勉強より沢山の体験を通じで学んだことは遥かに多かった。
 それがもとでその後の生き方が変わったと言えよう。
 あえて美しく明かるく書いた。それが私の青春だと言う自負のもとに…。
  


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